発達心理学と新生児 生後三歳までの心理社会的発達 No.3
―幼児の愛着と特徴―
母親を中心とする保護者に対して、どれだけ幼児が密接な関係を持っているか、愛着を有しているかは幼児の生育を正しく見極め、子育てをしていくうえで欠かせないことである。この愛着をアタッチメント (Attachment) と言い、何かにくっつく、接続していることを意味する。このように、愛着は幼児の保護者との心身の密接度を知るうえで非常に重要である。
― 愛着とは?
愛着:私たちの生活の中で、特別な人に対して私たちが懐く強い愛情の帯。
愛着の倫理理論 (Ethological Theory of Attachment):John Bowlby, 1969によって提唱された理論。愛着の発展段階は生後6-8か月程度から始まり、生後2歳まで続く。愛着の発達段階にて、しばしば分離不安 (Separation Anxiety) がみられる。
分離不安 (Separation Anxiety):愛情を注いでもらっている保護者との身体的な分離により、精神的分離不安を感じること。
― マリー・アインスウォースの実験・不慣れな状況 (Mary Ainsworth’s Strange Situation)
この実験では8つの段階を設け、そのそれぞれの段階において幼児がどのように反応を示すのかを観察する実験である。
• 親と幼児はプレイルームに通される。
• 親は椅子に座り、幼児は遊び始める。
• 幼児にとって知らない人が部屋に入ってきて、座り、親と話し始める。
• 親が部屋を退室する。知らない人がそれに応じ、親の代わりに幼児をあやし始める。
• 親が部屋に戻ってきて、幼児をあやす。知らない人が部屋を退室する。
• 引き続き、親が部屋を再び退室する。
• 知らない人が再度入室し、幼児をなだめ始める。
• 親が戻り、再びなだめ、幼児のおもちゃへの興味を取り戻させる。
安定型愛着の幼児は保護者を心の安定基地 (Secure Base) として使う、そして分離不安を見せ、知らない人によって慰められることは少ない。
― 不慣れな状況に対する愛着
安定型 | ・母親が近くにいるときは自由に遊びまわる。
・母親が部屋からいなくなると不安を感じ母親を探し回る。 ・知らない人がなだめても、慰められない。 ・母親が部屋に戻ってくると幸せそうに出迎える。 |
不安定回避型
不安定葛藤型 |
・不安な様子で母親の周りを付きまとう。
・母親が退室すると不安になり、泣き始める。 ・母親が部屋に戻るとすぐに近くに寄る、または気にしているが近寄ろうとしないが、その後は怒りを見せ、母親に攻撃的な態度や行動をする。また、母親に抱き着き、一切離れようとしない。 |
無秩序型 | ・一貫性がなく、安定的な常軌を逸した行動をする。
・母親が部屋から退室し、知らない人が入室してくると、その人に母親の代わりに、慰めを求める。 ・母親が部屋に戻ってきても、気にせずに自分の好きなことや現在興味のあることのみを行う。 |
― 結果:マリー・アインスウォースの実験・不慣れな状況より
・安定型愛着:65%
・不安定回避型愛着:20%
・不安定葛藤型愛着:10-15%
・無秩序型愛着:5-10%
・アタッチメントQセット:1-5歳の幼児の愛着性を測定するために用いられる90枚セットのカードのこと。それぞれのカードに記載されている説明文と幼児の実際の様子を比較し、類似行動からスコアをつけていく。
― 愛着性への影響因子
・愛着性のための機会:どれだけ保護者と幼児の間に愛着性があるか、またどの程度その愛着性を促進する機会があるか。
・養育の質:対人同調。親子間の同調が質の良い養育を通して育まれているか。
・幼児の性質:幼児が生まれもってもつ性質。
・家族観:家族との関係や状況。
愛着は様々な組み合わせや種類を構築する。より良い注意と継続的な養育が必要不可欠である。
― 愛着性の長期的な効果
・養育者とより安定的に繋がっている幼児は、将来的に良い人間関係を築くことが出来る。
・安定型愛着の幼児は、次第により多い語彙を獲得する傾向がある。
・安定型愛着の幼児の興味、関心、好奇心は非常に強く、また自己自信が高い。
以上に述べられた通り、養育者とその環境は幼児の愛着と、将来的な性格、性質にとって非常に重要な役割を果たすのである。保護者がどのように育児を見つめ、あるいは見直すかにって、幼児の愛着性も変化するのである。
執筆日2019年6月17日 執筆日Yoshi
7月4日編集・校閲
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